天然の歯をできるだけ残す保存治療
お口の健康を守る歯科医院として、虫歯や歯周病などの治療をご提供しています。
ですので、せっかく治療してお口のトラブルの進行を止めたのですから、ふたたび痛い思いやつらい思いをして欲しくありません。
そのため、当院では出来るだけ歯を残し、病気の再発を防ぐため、歯の保存治療を行っています。
歯の保存治療とは
虫歯による欠損、細菌による歯髄の汚染、歯垢や歯石により骨が溶ける歯周病など歯を失う原因は様々です。従来の歯科治療は歯の状態が悪化すると、自然に抜歯をする傾向がありました。しかし、お口の健康を維持するためには、安易に歯を抜くのは避けなければいけません。将来にわたってご自身の歯で噛めるよう、できるだけ抜歯をせず、お口の中を良い状態に維持・機能させること。それが歯の保存治療です。
歯の保存治療は主に以下の3つの方法があります。
- 「保存修復」:欠損部位を補修し歯の崩壊を防ぐ
- 「歯内療法」:細菌感染を起こした歯髄の治療
- 「歯周療法」:歯を支える歯根膜や歯槽骨を治療
当院では、これら3つの方法を駆使し「歯を削らず、神経を抜かず、抜歯をしない」治療を心がけています。
症例に合わせた保存治療
なぜ天然歯を残すことが大事なのか
では、なぜ天然歯の保存が重要なのでしょうか?
歯を失った際、それを補うインプラント、入れ歯などを利用して強度や審美面では確かに天然のものに近づけたり、天然歯以上のものを得ることが出来るかもしれません。
しかし、噛み心地や自身で回復する機能、(神経があることによる)痛みを感じる機能、いわば「防衛機能」というのは神経のない人工の歯では不可能であり、そういった点からも当院では出来る限り歯を保存することが望ましいと考えています。
当院の歯の保存治療
では歯を保存するためにどんな治療が必要なのでしょう。
削られた歯、失った歯はもちろん回復できません。
そのため、治療と再発を繰り返さない(「負のスパイラル」に陥らない)、歯を失うほど悪化する前に回復を促す必要があります。
これを実行するために、当院では精密な検査や虫歯の削り残しがなくす、など精密な治療、歯周病や虫歯で失われた組織の回復を組み合わせ、処置を行っていきます。
マイクロスコープによる精密治療
マイクロスコープは肉眼の数十倍の視野を確保することで、精密な治療を実現します。 歯を残す、歯の神経を生かすには精密な治療でその原因を処置することが重要です。 例えば虫歯の削り残しのないような細かな処置、虫歯の進行が神経部分まで達している場合に歯の神経を残すため、感染された部分を取り除く精密根管治療などで効果を発揮します。 またマイクロスコープと録画機能を併用することで患者様への理解を深められるようになります。
MTAセメントを用いた処置
以前は虫歯菌が歯の神経まで達した場合は歯の神経を抜く(抜髄)しかなく、根管治療自体の成功率も低かったため、再根管治療が必要となるケースも多々ありました。
しかし、近年MTAセメントを用いての治療により、これに改善が見られています。
使用方法としては歯の根を処置した箇所に上から覆い、封鎖性、抗菌性を利用し、菌の侵入を抑え、再発を予防します。
MTAセメントとは
MTAセメントとは1993年にアメリカのロマリンダ大学で開発され、日本では2007年より使用されているケイ酸カルシウムを主成分とした歯科用覆髄材料です。
生体親和性、封鎖性、抗菌性が高く、石灰化、細胞の活性化を促す効果があり、根管治療で歯の根を削った箇所に上から覆うように使用します。
MTAセメントのメリット・デメリット
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メリット
生体親和性の高い素材、ケイ酸カルシウムをベースとした歯科用覆髄材料で、詰めた際の抗菌性、封鎖性が高いため、菌の再付着を避け、再発を予防します。
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デメリット
自由診療の範囲であるため保険診療よりコストがかかります。またすべての症状に適応できるわけではないので、事前の歯科医師相談が必要。
症状別に行う歯の保存治療
虫歯の治療の場合
虫歯は徐々に歯の表面を溶かし、そのままにしておけば歯の神経や歯の根の部分に感染する危険な病気です。
通常は虫歯に侵された箇所を削り、詰め物や被せ物で塞ぐのが一般的ですが、このときに虫歯の感染された箇所が残ったままになると補綴物の下で再発してしまう可能性があります。
再発から再治療を繰り返していればいずれは歯を失う可能性が出てきます。
当院では虫歯に侵されている箇所をマイクロスコープやう蝕検知液を用いて範囲を確認し、取り残しのないように処置することで再発防止、削りすぎをしないことで歯への負担を軽減できるよう精度の高い虫歯治療を提供します。
露髄した場合
虫歯菌に感染した象牙質を削ると、歯髄が露出していることがあります。これを「露髄(ろずい)」と呼び、虫歯が深く進行しているケースで見受けられます。このようなケースは、以前ならば虫歯の再発を防ぐため、歯の神経を抜かなければいけませんでした。
しかし、抜髄をすると歯に栄養が行き渡らず、寿命が短くなります。当院では、できるだけ神経を残し、歯の寿命を伸ばすことを重視しているので、露髄があっても、歯の神経を保存できないかを丁寧に検討するのが特徴です。もし保存可能だと判断できる場合は、直接覆髄法を導入しています。これは露出した歯髄の表面に「MTAセメント」と呼ばれる薬を置いて、細菌感染しないように密閉封鎖する方法です。
歯髄が一部炎症を起こしている場合
虫歯が歯の神経(歯髄)にまで及ぶと「歯髄炎」と呼ばれる状態になります。このようなケースの場合、歯髄壊死を防ぐため歯の神経を抜く方法が一般的でした。しかし歯髄炎には「可逆性歯髄炎」と「不可逆性歯髄炎」の2種類があり、可逆性歯髄炎の場合は神経が元に戻る可能性があるので、必ずしも抜髄すれば良いわけではありません。当院では、症状を見極めた上で、可逆性歯髄炎ならば炎症している場所だけを抜髄するのが特徴です。歯の健康のため可能な限り神経を残していきます。
歯髄全体が炎症している場合
歯髄全体に感染が広がり、根の先に膿が溜まっている状態でも、抜歯ではなく抜髄で対応できないかを考えます。まず、丁寧に抜髄を行った後に、マイクロスコープを用いて根管内を細かく洗浄。その部分に薬剤を詰めていく精密根管充填によって、再治療のリスクを最小限に抑えています。以前は困難だった症例も、治療技術の進歩とマイクロスコープの登場によって極力長く歯を残すことができるようになってきました。
他院で歯の神経を抜くと言われた方へ
神経は抜くか?残すか?
当院には、歯に関する様々なトラブルをお持ちの方が相談に訪れます。なかでも多いのが、他院で歯の神経を抜く必要があると言われたケースです。歯の神経は一度抜いてしまうと、栄養が行き渡らなくなるため確実に歯の寿命が縮みます。
当院は長い間、細菌に感染している歯髄だけを除去する「歯髄保存治療」に積極的に取り組んできました。そこで、どうにかして歯の神経を残せないかといったご相談をいただいた際は、まずは本当に歯の神経を抜かなければならないのかを徹底的に検査いたします。残念ながら抜かざるを得ないと判断した場合も、なぜ抜髄が必要なのかを丁寧に説明し、患者様が納得の上で治療を決めていただくプロセスを重視しています。
歯の神経(歯髄)を残す理由
当院では先述のケースのように抜髄にならざるを得ない場合を除いて、できるだけ歯の神経を残したいと考えています。
というのも、歯の神経には歯に掛かる虫歯菌を退ける機能や、栄養を行き届かせる管の役割があり、栄養が行き届かない歯は「枯れ木」のような状態なので、歯が折れやすくなったり、黒ずんでしまったりしてしまう恐れがあります。
また神経が通わない歯は痛みを感じないため、再度、感染が歯の根に広まった時も気づきにくい状態になります。
このような理由から歯本来の機能を残し、歯の寿命を延ばすためにも神経を残す必要があると考えています。
歯の保存治療の実例
セラミック修復
Before
After
年齢 | 74 |
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性別 | 男性 |
治療内容 | 1回目:麻酔後、金属修復物を除去⇨形成⇨ラバーダム装着後、消毒してイミディエートデンティンシーリング⇨口腔内スキャナーで印象⇨仮封 2回目:仮封除去後、セラミック試適⇨ラバーダム装着後、口腔内消毒⇨接着処理⇨セラミック装着 ⇨研磨 |
通院回数 | 2回 |
費用 | セラミックインレー e-max:¥66,000〜 ジルコニア:¥11,000〜 装着代:¥1,100 (全て税込) |
注意点 | ・できるだけ治療にかかる回数を少なくしたい方は1DAYトリートメントが可能 ・治療箇所によっては周囲の歯と色に合わせるのが難しい場合があります。 ・天然歯と近い強度を持つ素材は、経年劣化により割れる・欠ける可能性があります。 |